株式会社ワークマン様
原価管理の効率化と情報の共有化でビジネスを加速させる
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誰もが手に取りやすいアイテム。ワークウェアからアパレルへ進出
株式会社ワークマンは、国内有数の流通企業グループであるベイシアグループに属する一社であり、工事現場や工場の作業員向けのワークウェアを扱う小売専門店を展開している。
1982年の設立以来、高機能かつリーズナブルな価格帯で作業服や作業関連用品を販売し、零細企業が立ち並ぶ個人向け作業着の市場において確固たる地位を築いた。近年では作業着や作業靴の機能性が他業界でも高い評価を受け、不況にあえぐアパレル業界の中で異例の大躍進。アウトドア、スポーツウェアを扱う「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」、女性向け商品に特化した「#ワークマン女子」といった新業態を展開し、従来にはない幅広い客層の開拓に成功した。
高収益を支える高度な原価管理
一方、同社の主軸となるのはやはり作業服を中心とした現場作業員向けのアイテム。高い機能性を求められながらも、消耗品であるがゆえに価格の値上げが難しい商品である。同社では海外を中心に独自の開発ルートを多数確保し、多数のPB商品を展開。セールを行わず常に底値で販売するという販売戦略を徹底。「高品質・低価格」のブランドイメージを維持し続けた背景には、他社の追随を許さない徹底した原価管理の存在がある。
かつては膨大なマンパワーによって支えられてきた原価管理は、HarborWrite®の導入によりどのような変化を見せたのだろうか。導入の立役者であり高度な原価管理業務を担い続けた生産管理部 生産管理グループ・製品分析グループ部長代理・中村陽氏に話をうかがった。
HarborWrite®導入まで ~原価管理の課題~
直接貿易取引開始に伴い始まった厳密な原価管理
設立当初から高機能・低価格の商品展開を是としていた同社において、輸入原価の管理は至上命題であった。品質を保ちながら価格を維持するため、買付先を国内のベンダーから中国の工場へと変更。輸入価格を抑えることには成功したものの、為替変動や地域情勢の変化による輸入価格の変動など、直接貿易取引だからこその要素への対応を迫られた
「直貿品であるPB商品の売り上げが好調でも、NB商品(メーカーの商品)の利益に負けてしまっては目も当てられません。直貿品がベンダーから購入した品よりも高くなっては困りますので、徹底した原価管理を行う必要に迫られました」と中村氏は当時を振り返る。同社が選んだ道は、項目を徹底的に細分化した原価計算。他の企業なら諸掛としてまとめられるような費用も、可能な限り詳細な記録を行った。
そうして分解された費用はMicrosoft Excelで集計。承認手続きのため、算出された数値を稟議書へ転記するといった作業が求められた。当時の同社が扱う商品数は、すでに数百種類。転記もそれぞれの商品ごとに求められるため、中村氏をはじめとする商品部のスタッフたちは書類作りのために多忙を極めることとなった。部門を横断した情報共有と原価計算が困難を極める
輸入の手続きは商品部だけでは完結せず、複数部門での情報共有が求められる。発注から支払い手続き完了までの間には、紙の資料の上で行われる何段階もの承認が必要。商品ごとに複数の資料がまとめられたファイルに記録された承認段階によって進捗を確認できたが、一方でファイルそのものが承認をする担当者間で直接回されていたため、どこまで承認が進んでいるか商品部から見えにくいという問題を抱えていた。
さらに、財務部が日ごとに行っていた移動平均法による原価管理も、書類をもとに全て手動で行われていた。商品ごとに行われる仕入額のレート換算に加え、諸掛の按分計算といった作業も発生。最終的な商品原価算出までには、大変な人的コストが必要とされていた。
適用範囲が広く、コストパフォーマンスに優れたHarborWrite®の導入を決定
煩雑さを極めた原価計算は、中村氏らの対応により滞りなく進行していたかに見えた。しかし、その実態は熟練したスタッフだけが対応できる属人化された業務であり、深夜残業がなければ終わらないほどに業務量は膨れ上がっていた。中村氏が「自分が倒れたら大変なことになる」と感じるほど、原価計算業務は危機的状況に直面。一方の同時期、同社では輸入品目および輸入先の急速な拡大を受け、原価計算を効率化させるシステムの導入を検討していた。
同社の原価計算における課題は、前述の通り原価計算項目と承認フローにあった。果たしてこの2点に対応できるシステムが存在するのか。中村氏は「システムを導入するとフローが乱れ、さらに業務が煩雑になるのではないか」と不安を抱え、導入には後ろ向きだったという。 しかし、複数のシステムを比較していく中で、中村氏はその印象が大きく変わっていったという。ゼロから組み上げるスクラッチ開発のシステムは、高額な開発費がネックとなり導入は困難であった。一方でHarborWrite®はパッケージ商品でありながら、あらゆる事情を吸収する柔軟なカスタマイズ性を備えていた。「こだわりが強い人が多かった」という同社からの要望を次々とし、理想のシステムへと姿を変えていくHarborWrite®に中村氏は大きな可能性を見出したという。さらには基礎となるパッケージの存在が功を奏し、不可能にも思えた原価計算項目や承認フローへの対応を実現。HarborWrite®を2016年から正式に採用し、破綻寸前であった原価計算業務を大きく改善させることになる。HarborWrite®の導入の効果 ~従来システムとのシームレスな連携を果たす~
業務フローそのままに工数の大幅な削減
原価計算項目の多さは課題ではあったが、一方で「いいものを安く提供する」という同社のポリシーを貫くために決して妥協のできないこだわりであった。HarborWrite®はそうしたこだわりを全て受け止め、業務フローを変えずに工数の大幅な削減を実現する。
発注から支払いまでの一連のフローにおいて、最も多くの工数を必要としていたのは書類の用意だった。ひとつの商品管理には10枚にも及ぶ書類が必要であり、それらに記載された項目や数値は、Excelや他の書類へと手動で何度も転記された。転記回数の多さはミスの温床となり、結果として書類の作り直しにつながる。かつて頻発していた転記ミスはHarborWrite®に登録されたデータの引用により防げるようになり、資料を作り直す二度手間や確認工程の削減に成功。また、HarborWrite®がWMS(倉庫管理システム)や会計システムとも連携可能になったことで、他システムとのシームレスなデータ共有が実現している。商品管理のデータベース化で確実な進捗管理を実現
「HarborWrite®導入による最大の恩恵は、直貿品情報のデータベース化です」と中村氏は語る。それまで紙の書類やExcelで管理されていた直貿品の情報は閲覧性に乏しく、過去データの参照が困難だった。しかしHarborWrite®で直貿品に関わる全情報がデータベース化されたことで、関連部門との情報共有が容易に。ファイルで把握されていた進捗も、HarborWrite®上での管理が可能となった。
データベース化の恩恵を最も強く受けたのは、財務部による原価管理であろう。移動平均法による原価の算出は、膨大な資料と品目数から大変な労力と時間を要していた。しかしHarborWrite®上で行われる原価計算は、データベースの活用により計算の工程を大幅に縮小。システムによる信憑性の高い原価計算が可能となり、正確な利益の算出にもつながっている。HarborWrite®による原価計算が、今後のビジネス拡大を支える
現在の同社の売り上げは、PB商品が6割以上を占めている。PB商品を販売して得られる利益をどれだけ正確に把握できるか。PB商品の利益管理が同社の今後を左右するといっても過言ではないだろう。HarborWrite®の導入によって、より早く正確に算出されるようになった商品原価。今後さらに増えていくPB商品においても、HarborWrite®の働きが期待される。
「実際に輸入してみないと分からないPB商品の原価計算をいかに正確に、そして大量にできるか。原価計算に係る業務量を一定に保ちながら取引量を増やしていくことが、弊社の拡大路線には必要です」と語る中村氏。今後も続くであろう同社の躍進には、HarborWrite®の存在が不可欠であるという。 最後に、中村氏はHarborWrite®との未来についてこう語った。「HarborWrite®は弊社の複雑な原価計算フローに対応し、弊社のビジネスを支えてくれました。お付き合いを始めて7年。今も頼りにさせてもらっているのと同時に、もっとこうしてほしいという希望も出てきています。ぜひ今後も長く付き合っていただき、弊社に潜在的に眠る要望をどんどん掘り起こしてほしいですね」